安室透が倒せない

「ナポリタンとアイスコーヒー、それと名前ちゃんのスマイル1つ!」

 夏休みで賑わうポアロの店内に男の陽気な声が響く。……あの男、確か捜査二課の斎藤だとか言っていたな。数週間前までは梓さんにやたらと絡んでいた癖に、今度はよりにもよって名前さんか。思わず、強く握りしめてしまった絞り袋から大量の生クリームが飛び出した。流石にこれはかけ過ぎだよな……まあ、コナンくんの分だからきっと許してくれるだろう。

「安室さん、それボクのパンケーキだよね?……生クリームで全く生地が見えないけど」
「……サービスだよ。あれ?コナンくん、ひょっとして生クリーム嫌いだったかい?」
「別に嫌いじゃないけど……」

 疑り深い顔で僕の顔を見るコナンくんに愛想笑いを返す。流石、少年探偵団と言うだけあって簡単には騙されてくれないようだ。ズズズッーと音を立ててオレンジジュースを啜るコナンくんと、目と目で語り合う。

“どうせ名前さんのこと見てたんでしょ”
“それは言わない約束だろう?”

 口には出さないが、お互いに何となく意思疎通が出来ているような気がした。自分だって本当はアイスコーヒーが飲みたい癖に、蘭さんの前だからって猫を被っているじゃないか。
 笑顔の僕と呆れ顔のコナンくんが互いにバチバチと視線を飛ばし合っていると、「ちょっとガキンチョ、何安室さんにガン飛ばしてんのよ……それより安室さん、アレ放っておいていいわけ?」と園子さんが例の刑事のテーブルを振り返って声を潜めるように呟いた。

「ご注文を繰り返します。ナポリタンとアイスコーヒー、以上で宜しいでしょうか?」
「それと名前ちゃんのスマイルね」
「……ここそういうのやってないんで」
「くぅ~、相変わらずの塩対応!いいじゃん、減るもんじゃないんだし!ほら、スマイルスマイル!」

 接客業なんだから笑顔が大事だよ、とほざく男に名前さんの冷ややかな視線が飛ぶ。駄目だ、ああいう男にはそれは逆効果だ。現に男はニタニタと厭らしい笑みを浮かべ、名前さんの反応を楽しんでいる。流石に助け船を出した方が良さそうだな。

「本当嫌、ああいう男!客だからって何でもしていいと思って勘違いしてるのよ、……馬鹿みたい」
「園子やめなよ、聞こえるって……」
「……ちょっと僕、行ってきます」

 あれが国民を守る警察官だと言うのだから、世も末だ。正義の味方である筈の警察官が女性を困らせてどうする。僕たちは本来、品位方正であるべき立場の筈だ。これでよく警察官が務まるな。内心苦々しい思いで僕はアイスコーヒーをお盆に乗せ、例のテーブルへと急いだ。
 名前さんの細っそりとした白い手に触れようと男の汚らしい手が伸びる。っ、させるか!半ばそれを阻止するかのように、僕がアイスコーヒーの入ったグラスをテーブルの上にドンッと叩きつけると、響く音に目の前の男はびくりと肩を揺らした。

「アイスコーヒーとスマイル、でしたよね?」
「お、おう、早いな安室さん……でも、俺名前ちゃんのスマイルが良かったんだけど……」
「……僕の笑顔はお気に召さないと?」

 大体、名前さんのスマイルは零円なんかじゃない、百億あっても足りないくらいだ。そう易々と頼んでもらっちゃ困る。僕は米神辺りの皮膚ががピクピクと痙攣し出すのを感じながら、もう一度にっこりと微笑んでそう返した。反論なんてさせてたまるか。
 すると先程までの元気は何処へいったのか、気まずそうに男は僕から視線を逸らし始める。そんな男の様子を一瞥し、僕は名前さんの背にそっと手を置いた。

「名前さん、梓さんにオーダー通してきてください」
「え、あ、うん……安室さん、有難う」

 君がそんな気まずい顔をする必要はないさ。そんな意味も込めて、彼女の背をポンポンと優しく叩くと、名前さんが僕の瞳を見上げてきた。っ、少し不安げな表情が正直可愛い。カウンターの中へと戻っていく名前さんの後ろ姿を見送っていると、ボソッと男が呟いた。

「良い尻してんな」

 本当に懲りない男だな!ギロリとその男を睨むと、男はまた僕から目を逸らして誤魔化すように口笛を吹き始めた。ったく、とんだセクハラ野郎だ。

「さっすが、安室さんね~!名前さんのこと庇って、その場も上手く収めちゃって♡格好良かったわよね、蘭!」
「うん、“僕の笑顔はお気に召さないと?”って格好良かったです!」
「もう二人とも揶揄わないでくださいよ……」
「だって、本当に格好良かったんだから~!」

 王子だ、騎士だと騒ぐ二人に僕は苦笑を浮かべて頬を掻く。肝心の名前さんは、梓さんと二人で雑談をしながら何か作っているようだった。ちらりと横目で名前さんを見遣り、視線を戻すと、僕の目の前に座るコナンくんは頬杖をついてズルズルとジュースを啜っていた。園子さんと蘭さんはまだ楽しそうに話している。やめろコナンくん、そんな目で僕を見るんじゃない。

 ◇◇◇

「あ、パスタもうあと一人分くらいしかないみたい。まだ裏にあったっけ?」

 グツグツと煮えたぎる鍋にパスタを入れながら梓ちゃんが私に問い掛ける。タイマーがピッと音を立て、カウントを開始した。その間にも、二人でキッチンの上を片付けたりと手は動かしたままだ。

「確かまだ何袋かあったような気がするけど……ナポリタン出してから、私見てこようか?」
「ごめんね、名前ちゃん。今入ってるオーダーで使い切っちゃいそうだから、そうして貰えると助かるな……」

 ナポリタンの後は、カラスミパスタで取り敢えず今のところは他にパスタのオーダーは入っていないみたい。注文シートを見てホッとしていると「それよりも、」と声のボリュームを落とした梓ちゃんが私の耳元で言葉を続ける。大方、斎藤さんのことだろう。

「名前ちゃん、大丈夫?斎藤さんに変なことされてない?」
「もう、梓ちゃんは心配性なんだから……あれくらい大丈夫だよ」
「本当に?何かあったら絶対に言ってね!……そうだ、この料理も私が持っていこうか?」
「大丈夫、大丈夫!ほら、梓ちゃんは次のオーダーも作らなきゃでしょ。カラスミパスタ、梓ちゃんが一番作るの上手だし!ね?」

 完成したナポリタンをお盆に乗せ、心配性な梓ちゃんを安心させるように微笑む。湯気が立つほど熱々のナポリタンは、甘酸っぱいケチャップの香りがとても食欲をそそる。どこの喫茶店でも定番メニューだけれど、ここポアロのナポリタンも昔ながらの味付けで人気だ。
 本当に良い香りで美味しそうと頬を緩めていると、急に手に持ったお盆が軽くなった。不思議に思い振り返ると、筋の浮かぶ褐色の腕がナポリタンの入った白いお皿を持ち上げていた。安室さんの蒼い瞳と視線が交わる。

「……これは、僕が持っていきますから。名前さんは、奥の家族連れのテーブルにハムサンドをお願い出来ますか?」
「え、でも……」
「ほら、お客様が待ってますよ」

 にっこりと微笑む安室さんに逆らえるわけもなく、代わりにお盆の上に乗せられたハムサンドを見つめてもう一度安室さんの蒼い瞳を見上げた。

「……有難う」
「ん?何のことだい?さ、行きましょう」
「もう……すぐ惚けるんだから」

 結局また安室さんに助けられてしまった。いつも周りの様子をよく見ていて、気配りの出来る人。優しくって、頼り甲斐があって、大人な安室さんについつい甘えてしまう。

「チッ、何だ安室さんかよ……」

 案の定、手前のテーブルでは斎藤さんが文句を垂れていた。苦笑を浮かべて「ごゆっくり」と返す安室さんの姿を見つめ、やっぱり代わってもらって良かったなと思った。後できちんと安室さんにお礼を言っておこう。

「お待たせしました、ご注文のハムサンドです。ご注文は以上でお揃いですか?」
「ええ」
「名前お姉さん……僕、お水のおかわり欲しい」
「ごめんなさい、お水頂けるかしら?」
「畏まりました。少々お待ちください」

 名前を覚えられてしまった。最近よくご来店される家族連れだ。車が好きなようで、店内が暇な時は車の絵本を広げて安室さんとよく話し込んでいる姿を見かけることもある。

「わあ……ホンモノのFD3Sだ!かっけえ……!!」
「ハハッ、乗ってみるかい?」
「いいの!?」
「走らせることは出来ないけれど、ほらおいで」

 安室さんの白い愛車を見つめ、キラキラと目を輝かせている姿がとても可愛かった。安室さんも同じようで、エンジンまでかけてあげるサービスっぷり。エンジン音に更に興奮した様子で「僕、大人になったら絶対に安室さんと同じFD3Sに乗るんだ!」と宣言する小さな姿に安室さんと何故か私まで頬を緩めてしまったことを思い出す。あの時と同じように少し頬を緩めてカウンターへとお水を取りに向かう途中で、カランと私の足元へと何かが落ちる音がした。

「あ、悪い。名前ちゃん、フォーク取って」

 少し浮かれていた自分が馬鹿みたいだ。ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべる斎藤さんに嫌悪感しか湧かない。お客様だといってもこればかりは生理現象だから仕方のないことだった。
 先程から私の身体中に斎藤さんの不躾な視線が飛んでいることくらい疾うに気付いている。女性というものは、自分の身体に向けられる他人の視線に意外と敏感なのだ。
 今も私の胸元やお尻の辺りを厭らしい目付きで盗み見ているし、どうせフォークを落としたのも態とだろう。正直、しゃがみたくなかった。
 そんな時、スッと手前から褐色の手が伸びてきて私の代わりにその手が落ちたフォークを拾った。

「ここは僕に任せて、名前さんはお水注いできてください」

 私に水の入ったピッチャーを差し出し、耳元でそう囁く安室さんにまたも助けられてしまった。ね?と蒼い瞳を綺麗に片方閉じてピッチャーをずいっと押し付けてくる安室さんからそれを受け取ってくるりと来た道を戻っていく。あんなにウィンクの似合う29歳男性を私は他に知らない。

「……今、新しいものをお持ちしますね」
「な、何だよまた安室さんかよ……」
「“僕で”すみません」

 ◇◇◇

「そういえば、蘭。今日、“ハートの日”っていうらしいわよ。8月10日でハートの日!アンタもあの推理オタクに指ハートの写真でも送れば?」
「な、何で私が新一に……!」
「そりゃ、彼女だからでしょうよ。私も真さんに送ろうかしら♡あとで撮ってよ、蘭!」
「はいはい……」

 園子ちゃんと蘭ちゃんの賑やかな声がカウンターの隅で作業をする私の方まで届いてくる。そうか、ハートの日か。確か昨日は別の高校生がハグの日だとか言ってたっけ?

「あ、そうだ!安室さんも指ハート、やってみてよ!」
「え、指ハート……ですか?」
「そう!イケメンだから絶対似合うわ!」
「……園子、やめなって」
「何でよ」
「安室さんに迷惑でしょ」
「はは、別にいいですよ……指ハートって指でハートを作ればいいのかな?」

 何か意外な展開になっている。何気なく安室さんの方を見ると、ぱちりと目が合ってしまった。今日は何だかよく目が合う気がする。フッと一瞬微笑まれて、次の瞬間には園子ちゃんの方へと視線を戻す安室さんに私一人だけ頬を染めてしまった。

「名前ちゃん、耳赤いけどどうしたの?」
「な、何でもない……」
「そう?」

 不意打ちは狡い。私を真っ赤にさせた張本人は「……こうですか?」と両手でハートを作っている。その容姿も相まって、まるで何処かのアイドルみたいだ。

「……見た目が若いから忘れてたわ。やっぱり安室さんも29歳なのね」
「え、何ですか……急に」

 額を抑えて園子ちゃんが嘆き始める。ふふ、安室さんって確かにこういうこと疎かったりするんだよなあ。「折角のイケメンが台無しよ!」だなんて大袈裟に騒いで指ハートを安室さんにレクチャーし始める園子ちゃんと、律儀にそれを真似する安室さんの仄々とした様子につい頬が緩んでしまう。

「梓ちゃん。私、裏にパスタ見に行ってくるね」
「有難う、お願いね」

「なるほど……親指と人差し指をクロスしてハートを作る、と。意外と難しいですね」
「安室さん、名前さんに笑われてるわよ!」

 くすくすと小さく笑いながら安室さんの後ろを通っていたのがバレてしまった。「もう、笑いましたね……!」とこちらを振り向く安室さんに「笑ってない、笑ってない」と手を振って裏へと逃げる。確か戸棚の上の方にまだパスタあったよなあと手を伸ばしていると、ストックルームの扉が開く音がして私の上に影が差した。

「……はい。パスタで良かったですか?」
「うん、有難う」
「さっきは良くも僕のこと笑ってくれましたね」
「ふふ、ちょっとそれでここまで追ってきたとか言わないよね?」
「さあ、どうでしょう?」

 安室さんからパスタを受け取るが、どうも退いてくれる気配がない。背後から覆い被さるように密着したまま、私の耳元で喋るものだから少し擽ったい。

「やだ、擽ったいから少し離れてよ……」
「嫌だと言ったら?」

 安室さんの筋肉質な腕が、私のお腹の前まで伸びてグッと引き寄せられてしまった。空調が効いてるとは言え、外は三十度を優に超える真夏日だ。体温の高い安室さんが背中にくっついていると正直暑い。

「ん、ハグの日はもうとっくに終わってるよ。暑いから離れて……」
「連れないこと言わないでくださいよ……それに僕、ちょっと怒ってるんですからね」
「ええ、何?……あ、さっき笑ったことなら謝るから、ねえ離して」

 私のお腹に巻きつき離れない小麦色の腕をぺしぺしと叩くと、更にギュッと強く抱きしめられた。……本当に意地悪。安室さんっていつもは大人なのに、こうやってたまに大人気なくなる。

「……斎藤さんのことですよ。一人で何でも解決しようとしないでください」
「ごめん、……あれくらい私一人で大丈夫かなって」
「……もっと僕のこと頼ってくれてもいいじゃないですか。そんなに僕って頼りないですか?」

 こちらを覗き込むようにして真剣な表情で私の瞳を射抜く蒼い瞳から目が逸らせない。頼りなくなんてないのに。知らない間に安室さんのこと不安にさせていたのかな。

「そんなこと、ないよ……さっきだって、庇ってくれて嬉しかった。有難う」
「ったく、ちゃんと次からはもっと僕を頼るように──約束ですよ」
「うん、ごめん……」

 ゆっくりと近付く蒼い瞳にそっと目を閉じる。勤務中に私たちは何をしているのだろう。柔らかな安室さんの唇に唇を啄まれながら、頭の隅でそんなことを考えた。割り込んでくる舌に翻弄され、息も絶え絶えだ。身体をなぞり始める熱い手の平を咎めるように手を重ねる。離れていく唇をぼんやりと見つめていたら、首筋にぴりっとした痛みを覚えた。

「もう、見えるところに痕付けないでっていつも言ってるのに……」
「虫除け、ですよ」

 満足そうにその蒼い瞳を細める安室さんにもう何も言えそうになかった。

 ◇◇◇

「梓ちゃん遅くなってごめんね、一人で大丈夫だった?」
「ふふ、少し空いてきたから大丈夫よ。それよりパスタはあった?」
「あ、うん。まだ二袋残ってたから、今日の分は大丈夫そう」

 絶対に梓ちゃんには全て見透かされてるような気がする。やだなあ、恥ずかしい。

「あれれ?安室さん、小麦粉取りに行ったんじゃなかったの?」
「あ、そうでした。すっかり忘れていた……」
「ははーん、さては名前さんのことで頭がいっぱいだったんでしょ!わかるわ、私もよく真さんのことで一杯になっちゃうから……!」
「ははは、もう園子さんからかわないでくださいよ」
「笑って誤魔化しても駄目よー!今日という今日はじっくり二人のこと聞かせてもらうんだから!」
「困ったな、そんな君たちが期待するような話は何も無いですよ……」

 恐るべしJKパワー。園子ちゃんと蘭ちゃんから送られる期待で一杯の熱い視線に流石の安室さんもたじたじといった様子だ。

「名前ちゃん、お勘定!」
「あ、はい。今、行きます」

 私を呼ぶ斎藤さんの声に、安室さんの方をちらりと見る。私の言いたいことが伝わったようで、安室さんはこちらを見て頷き「じゃ、僕レジに行ってくるので……」と話を中断させた。

「さ、行きましょう」
「うん……」

「すみません、お待たせしました」
「……何だよ、また安室さんも一緒か」
「そう仰らずに……えっと、ナポリタンとアイスコーヒーでしたね。1100円です……あ、今日は僕のスマイル代はおまけしておくので結構ですよ」
「チッ、ほら丁度だよ!」

 カルトンの上に投げつけるように置かれたお金を確認し、安室さんがレシートを差し出すと斎藤さんはぐしゃぐしゃとそれを丸めてポケットの中へと突っ込んだ。

「あ、外までお見送りしますよ」
「どうせなら、可愛い名前ちゃんだけで良かったんだけどな!」
「まあまあ……」

 上部に取り付けられたベルがカランと音を立てる扉を安室さんが押さえ、退店を促す。何だかよく分からないけれど、安室さんに続くように扉の外へと出た。

「あれ、名前ちゃん……首のとこ、ちょっと赤くなってないか?」
「え、あ……ちょっと虫に刺されたみたいで」
「本当ですね……これ以上、悪い虫に刺されないようにしっかり虫除けしておかないといけませんね」

 腰に回される腕に、その持ち主を見上げるととても怖い表情で斎藤さんのことを見つめていた。

「お、おいおい、そういうことかよ……!チッ」

 大きな舌打ちを残して去っていく斎藤さんの後ろ姿に「有難うございました~!」とやけに明るい安室さんの声が響く。

「さ、戻りましょうか」

 どこかスッキリとした表情で安室さんがそう呟いたのだった──。

 ◇◇◇

「おい、風見。例の知能犯の案件、悪いが捜査二課に回しておいてくれ」
「はい、ですが降谷さん……この案件は公安で処理するはずじゃ」
「こっちも手一杯だ。猫の手も借りたいくらいだよ。どうやら捜査二課は、怪盗キッドどころか女の尻を追いかけるくらい暇なようだからな。丁度いいだろう。それと、これとこれ、あとこれも一緒に回しておいてくれ」
「さ、流石にこの量はいくら捜査二課でも大変では……」
「それはこちらも同じ条件だろう……ほら、早く行け」

 それから暫く、喫茶ポアロで斎藤を見かけることはなかった──。

 winner 安室透